「得意なことが分からない」とつぶやく人は多い。実は「得意」という言葉そのものが、ふたつの違うものを指していることが、迷いの正体かもしれ⁠な⁠い⁠。

なぜ「得意なことが分からない」と感じるのか

会社の面談や転職活動で「得意なことは?」と聞かれ、答えに詰まった経験がある人は少なく⁠な⁠い⁠。

得意なことを聞かれると、多くの人は「人より上手にできること」を探し始める。しかし比較の軸で探すと、いつも誰かと比べて見劣りしてし⁠ま⁠う⁠。

たとえば事務作業が早い同僚がいれば、自分の処理速度はその人より遅く見える。すると「得意ではない」とすぐに結論づけてし⁠ま⁠う⁠。

たとえば転職活動の面接で、「強みを教えてください」と聞かれて言葉に詰まった人がいる。前職での数字は覚えていても、それが「得意」と呼べるのか自信が持てなかったとい⁠う⁠。

このとき本当に足りないのは実績ではなく、何を基準に「得意」と呼ぶかという視点だ。基準がはっきりしないまま探すと、いつまでも迷いは解け⁠な⁠い⁠。

この探し方そのものに無理がある。得意かどうかを「技術の上手さ」だけで測ろうとすると、基準がいつも相手によって変わってし⁠ま⁠う⁠。

得意なことが分からないという悩みは、能力が足りないのではなく、探し方の軸がずれていることが多い。まずはこの違いに気づくことが、次の一歩につな⁠が⁠る⁠。

「得意」には二つの意味がある

得意という言葉には、大きく分けて二つの意味が混ざっている。ひとつは後天的に磨いたスキル、もうひとつは生まれつき湧きやすい力そのも⁠の⁠だ⁠。

スキルは練習すれば誰でも一定レベルまで伸ばせる。たとえば表計算の関数やプレゼン資料の作り方は、訓練次第で上達して⁠い⁠く⁠。

一方で、同じ訓練をしても「やっていて楽しい」と感じる人と「苦痛でしかない」と感じる人に分かれる。この差が、生まれつきの動力源の違⁠い⁠だ⁠。

たとえば資格の勉強で同じテキストを使っても、暗記がはかどる人と、実践問題を解くことで理解が深まる人がいる。方法の向き不向きにも、スキルとコアの違いが影響して⁠い⁠る⁠。

スキルは後からいくらでも積み増せるが、コアは土台のようなもので変わらない。土台に合わない方法で頑張り続けると、同じ努力でも疲れ方がまったく違って⁠く⁠る⁠。

LifeFlowではこの動力源を「コア」と呼んでいる。コアは性格診断とは違い、生年月日から決まり、生涯変わらないという考え方だ。コアは愛・楽・個・智・徳・才の6つに分かれていて、何に触れると力が湧きやすいかを示して⁠い⁠る⁠。

動力源(コア)という視点で見直す

人と話すことで元気になる人もいれば、一人で資料を読み込むことで集中できる人もいる。どちらが優れているかではなく、動力源が違うだ⁠け⁠だ⁠。

ある人は後輩の相談に乗っているうちにエネルギーが満ちていく。別の人は黙々と数字を整理している時間にこそ落ち着きを感⁠じ⁠る⁠。

どちらのタイプも「得意」を持っているが、外からは分かりにくい。得意は目立つ成果ではなく、無理なく続けられる動きとして現れるか⁠ら⁠だ⁠。

職場の会議でも、意見を出し合う場で生き生きする人と、議事録をまとめる場で安心する人がいる。どちらも会議に必要な役割だが、湧いてくる力の種類が違⁠う⁠。

周囲から見ると地味に映る動きの中にこそ、本人にとっての得意が隠れていることがある。目立たないからといって、それが価値の低い力というわけでは⁠な⁠い⁠。

子育ての場面でも似たことが起きる。同じ絵本の読み聞かせでも、声色を変えて盛り上げるのが楽しい親と、静かに淡々と読むのが心地よい親がいる。負担が少ない方が、その人のコアに近い動き方だと言⁠え⁠る⁠。

得意とは、人より優れていることではなく、無理なく続けられることの中にある。

方向と役割ーフィールドとコンパス

コアが分かっても、それをどう発揮するかは人によって違う。LifeFlowではこの発揮の方向を「フィールド」と呼び、革新・共鳴・継続・設計の4つに分けて⁠い⁠る⁠。

さらに、どんな役割で力を出すかを示すのが「コンパス」だ。創造者や支援者、構成者など、全部で8つの役割があ⁠る⁠。

たとえば同じ「人と話すのが好き」というコアを持つ人でも、新しい企画を考えるのが好きな人と、チームをまとめるのが好きな人がい⁠る⁠。

営業の仕事でも、新規開拓にわくわくする人と、既存客との関係を深めることに手応えを感じる人がいる。前者は拡大者、後者は支援者の役割に近いと言⁠え⁠る⁠。

同じコアでも発揮する場所が変われば、周囲からの見え方も評価も変わってくる。得意が活きる場を選ぶことは、才能そのものを伸ばすのと同じくらい大⁠切⁠だ⁠。

コアとコンパスを掛け合わせると、たとえば「愛の創造者」のように、組み合わせで力の出方を捉えることができる。自分がどの組み合わせに近いかを知ると、「得意だけど自分では気づいていなかった動き」に光が当たりやすく⁠な⁠る⁠。

「乗れているか」で変わる得意の見え方

得意なことが分からないと感じる背景には、今の環境でうまく流れに乗れていないことも関係している。LifeFlowではこれを「フローレベル」という段階で捉⁠え⁠る⁠。

上から「フロー」「解放」「ループ」「制約」の4段階があり、点数ではなく今の「乗り方」を表して⁠い⁠る⁠。

たとえば仕事に追われて「やるべきことをこなすだけ」の時期は、ループの状態に近い。この時期は本来得意なことも、作業の一部に埋もれて見えなく⁠な⁠る⁠。

家庭でも、毎日の家事をこなすだけの時期と、自分なりに工夫して楽しめている時期とでは、同じ作業でも気持ちの軽さがまったく違⁠う⁠。

段階は固定されたものではなく、負担の増減によって揺れ動く。一度解放の感覚を知っていれば、制約に近づいても戻り方を思い出しや⁠す⁠い⁠。

興味深いのは、やることを増やすのではなく、減らしたときにこの段階が上がりやすいという点だ。得意が見えないときほど、新しいことを足すより先に、今の負担をひとつ減らしてみる方が効果的なことが⁠あ⁠る⁠。

得意を知る一歩目は、動力源を知ること

ここまで見てきたように、得意なことが分からないという悩みは、探し方や見ている段階がずれているだけのことが多⁠い⁠。

スキルの比較で探すのをやめて、まず自分が何をしているときに無理なく力が湧くかを観察して⁠み⁠る⁠。

友人との会話、仕事の資料作り、家族との時間、趣味の作業、どんな場面でもいいので「気づいたら時間が経っていた」瞬間を思い出して⁠み⁠る⁠。

ある人は、休日に家計簿をつけている時間が一番落ち着くと気づいた。数字を整理すること自体が、その人にとっての自然な動力源だったのかもしれ⁠な⁠い⁠。

小さな気づきの積み重ねが、やがて「自分は何に向いているか」という大きな問いへの答えにつながっていく。焦らず、日常の中で確かめていけば⁠い⁠い⁠。

コアを知ることは、得意を無理に作り出すことではなく、もともとある力の流れに気づくことに近い。得意なことが分からないと感じたときこそ、自分の動力源に立ち返ってみてほ⁠し⁠い⁠。

この記事のまとめ
  • 得意が分からないのは能力不足ではなく、探し方の軸がずれていることが多い
  • 「得意」にはスキルと生まれつきの動力源(コア)という二つの意味が混ざっている
  • コアは無理なく力が湧く源で、フィールドとコンパスがその発揮の方向と役割を示す
  • 今の環境での「乗り方」=フローレベルによって、得意の見え方も変わる
  • 得意を見つける一歩目は、比較ではなく自分の動力源に気づくことから始まる