毎朝同じ時間に起きて、同じ仕事をしているはずなのに、なぜかうまく流れに乗れる日と、やたらと重たく感じる日がある。その違いをLifeFlowでは「フローレベル」という視点で見ていく。
同じ毎日なのに、「乗れる日」と「つかえる日」がある
たとえば45歳の営業職の男性がいる。20年近く同じ会社で同じ商品を売ってきた。ある月は電話をかけるのも商談に出るのも軽やかで、数字も自然についてくる。
ところが別の月は、同じ商談の準備をしているだけで気が重く、成果も伸び悩む。本人は「今月は調子が悪かった」と片づけてしまうが、これは調子の良し悪しだけの話ではないかもしれない。
LifeFlowでは、こうした違いを性格のせいにも、能力の差のせいにもしない。同じ人が、同じ仕事をしていても、乗り方が変わることがあるからだ。大事なのは「何をしているか」ではなく「どう乗っているか」という視点である。
33歳の共働きの女性にも似たことが起こる。家事も育児も仕事も、去年と同じ量をこなしているのに、ある時期は驚くほど手際よくこなせて、ある時期はひとつひとつが負担に感じられる。環境も担当業務も変わっていないのに、本人の中の「乗り方」だけが変わっている。
この乗り方の違いを、LifeFlowでは4段階に分けて見ている。それぞれに名前がついていて、今どの段にいるかを知ることは、これからの働き方や暮らし方を考えるうえで、意外なほど役に立つ。
たとえば10歳の子どもに算数を教える母親も、同じ揺れを経験する。ある週は横に座るだけで子どもが自然と手を動かすのに、別の週は同じ教え方でも子どもが固まってしまう。教え方を変えていないのに結果が変わるのは、乗り方という別の軸があるからかもしれない。
フローレベルという、もうひとつの物差し
フローレベルは、上から順に「フロー」「解放」「ループ」「制約」の4段階で表される。フローは、自分の意思で自由に選び取っている状態。
解放は、自分で決めて、その結果を引き受けている状態。ループは、やってはいるけれど自分では決めていない状態。制約は、口では言うけれど実際には動けていない状態を指す。
これは点数をつけて優劣を測るものではない。あくまで「今、どう乗っているか」を表す物差しであり、良い悪いの話ではない。誰にでも得意な場面と苦手な場面があり、同じ人でも領域によって段が違うことは珍しくない。
たとえば52歳の管理職の女性は、部下の育成については自分で判断し、結果も引き受ける「解放」の乗り方をしている。
ところが家庭の家計管理になると、夫に任せきりで、口では気にしていると言いながら実際には何もしていない「制約」の乗り方になっている。同じ人の中に、複数の段が同時に存在している。
この4段階は、役職や年収といった外側の指標とは重ならないことも多い。役職が上でも「制約」の乗り方をしている人もいれば、新人でも担当業務については「解放」の乗り方をしている人もいる。段を知ることは、肩書きでは見えない部分に光を当てる作業でもある。
上の段にいる人は、こんな景色を生きている
「フロー」の段にいる人は、まわりから見ても軽やかに映る。60代で会社を退職した男性が、若い頃からの写真を再開したとする。誰に頼まれたわけでもなく、毎朝カメラを持って近所を歩く。
時間を忘れて夢中になり、疲れるどころかむしろ元気になって帰ってくる。これはやりたいからやっている、という内発的な動機がそのまま行動になっている状態だ。
「解放」の段は、フローほど自由ではないが、自分で決めて引き受けている状態だ。38歳で会社を辞めて独立したデザイナーがいる。
案件を選ぶのも、断るのも自分の判断で、うまくいかない時期があっても「自分で決めたことだから」と受け止められる。楽しいことばかりではないが、他人のせいにしない分だけ、行動が安定して見える。
フローと解放の共通点は、決める主体が自分にあるということだ。うまくいく日ばかりではないが、選んでいる感覚があるかどうかが、周りから見た印象を大きく変えている。
趣味に限らず、日々の家事にも同じことが起きる。70歳の女性が毎朝台所に立ち、誰に頼まれるでもなく季節の献立を考えているとする。義務感からではなく作ること自体が楽しくて仕方がない様子は、フローの乗り方が日常の隅々に広がっている例だと言える。
下の段にいる人も、実はがんばっている
「ループ」の段にいる人は、決して怠けているわけではない。25歳の新入社員が、上司に言われた通りに資料を作り、言われた通りに研修に参加している。
真面目にこなしてはいるが、なぜそれをやるのかを自分では決めておらず、指示が来なくなると急に手が止まってしまう。本人はむしろ「頑張っている」つもりでいることが多い。
「制約」の段は、口では言うけれど実際には動けていない状態だ。48歳の男性が「そろそろ転職を考えている」と何年も言い続けているのに、実際に求人を調べることも面接を受けることもしない。
これは意志が弱いというより、動けない理由が本人の中に積み重なっていて、言葉と行動の間に距離ができている状態と見ることができる。
同じ仕事、同じ役職、同じ年数。それでも、乗り方は人によって違う。
ループも制約も、責められるべき状態ではない。誰にでも、うまく乗れない領域はあるし、そこに長くとどまっている場面があって当然だ。大事なのは、今どの段にいるかを責めることではなく、ただ見えるようにしておくことだ。
職場の人間関係でも似た構図が見られる。30代の男性社員が、チームの飲み会の幹事を毎回引き受けながら「本当はやりたくない」とこぼしている。誰に指名されたわけでもないのに断れずにいる状態は、ループとも制約とも言い切れない、その境目にあるような乗り方だ。
何年そこにいても、段は勝手には上がらない
ここではっきりさせておきたいことがある。フローレベルは、時間が経てば自然に上がるものではない。何年その仕事を続けても、何年その役職についても、同じ段にとどまり続ける人はとどまり続ける。
最初に出てきた45歳の営業職の男性は、20年近く同じ仕事を続けてきた。経験も知識も十分にある。それでも「ループ」の乗り方のままであれば、20年前と同じように、指示や数字に追われる感覚から抜け出せていないことがある。年数やキャリアの長さは、乗り方の段とは別の話なのだ。
ただし、一度身につけた乗り方は簡単には消えない。以前「解放」の乗り方を経験したことがある人は、一時的に「ループ」に落ちても、そこに戻る道筋を持っていることが多い。下がることはあっても、完全に失われるわけではないというのは、覚えておいてよいことだと思う。
これは年功序列的な感覚とは相性が悪い事実かもしれない。長く勤めれば自然と裁量が増え、乗り方も上がっていくはずだという期待は、必ずしも当てはまらない。環境が変わらないまま時間だけが過ぎると、同じ乗り方が固定化されやすいとも言える。
上がるのは、増やした時ではなく、減らした時
では、段が上がるきっかけは何なのか。多くの人が、もっと頑張れば、もっと予定を詰め込めば上に行けると考えがちだが、LifeFlowで見えてくるのは逆の傾向だ。段が上がるのは、やることを増やしたときではなく、減らしたときであることが多い。
先ほどの33歳の共働き女性は、あるとき家事の一部を思い切って外注し、引き受ける仕事の数も絞った。結果として抱えるものは減ったのに、それぞれへの向き合い方が変わり、以前よりも自分の意思で動けている感覚が出てきたという。これは何かを新しく足したのではなく、削ったことで起きた変化だった。
何を減らせば乗り方が変わるのか、その手がかりになるのが、生まれ持った動力源、つまり自分の「コア」を知ることだとLifeFlowでは考えている。
何に触れると力が湧くのかがわかれば、無理に増やしていたものと、本当は必要なかったものの区別がつきやすくなる。この連載では、フロー・解放・ループ・制約という4つの段階を、一つずつ順に見ていく。
増やすことに慣れている人ほど、この逆転に戸惑うかもしれない。予定を詰め込むことで安心してきた人にとって、何かを手放す選択は不安に感じられる。しかし乗り方が変わった人の多くは、減らした後にしばらくして「前より自分で決めている」感覚に気づいている。
この記事のまとめ
- フローレベルとは、性格や能力ではなく「今どう乗れているか」を4段階で見る物差しである。
- 上から「フロー」「解放」「ループ」「制約」の4段階があり、優劣ではなく乗り方の違いを表す。
- 同じ人でも、仕事と家庭など領域によって段が異なることは珍しくない。
- 段は時間が経てば自然に上がるものではなく、何年同じ場所にいても変わらないことがある。
- 段が上がるのは、やることを増やした時ではなく、減らした時であることが多い。