私たちは、日々さまざまな選択をしながら生きています。仕事を続けるか、転職するか。挑戦するか、待つか。踏み出すか、それとも立ち止まるか。人生には、正解が分からない場面が何度も訪れます。そんなとき、多くの人は「もっと頑張れば何とかなる」と考えます。もちろん、努力は大切です。けれど、どれだけ努力を重ねても結果につながらない時期がある一方で、不思議なくらい物事が自然と進んでいく時期があることも、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
努力しても進まない時期、自然と進む時期
では、その違いは何なのでしょう。能力でしょうか。才能でしょうか。それとも、運でしょうか。
私はその答えを考え続ける中で、一つの視点にたどり着きました。それは、「自然界を見れば、答えがある」ということです。
自然界には、逆らえない法則がある
私たちは、自然法則には逆らえません。地球には重力があり、物を手から離せば落ちます。海には潮の満ち引きがあり、月の引力によって、毎日規則正しく海面は変化しています。太陽は東から昇り、西へ沈みます。季節は、春、夏、秋、冬を繰り返します。
誰かの気分で春が来たり、今年だけ冬がなくなったりすることはありません。自然は、人間の意思とは関係なく、一定の法則に従って動いています。そして私たちは、その法則を当たり前に受け入れて生活しています。農家の人は、冬に稲を植えません。スキー場は、真夏の営業を前提に設備を作りません。桜が一月に咲かないことを、責める人もいません。なぜなら、「今は、その時期ではない」と知っているからです。
桜は、冬に咲こうとしない
もし桜が、冬に無理やり花を咲かせようとしたら、どうなるでしょう。寒さで傷つき、美しい花を咲かせることはできません。だから桜は、冬の間、見えないところで静かに根を張り、養分を蓄えています。
外から見ると、何もしていないように見えます。枝は裸で、動きもありません。しかし実際には、春に咲くための準備を、地中でずっと続けているのです。
人にも、季節がある
人も、同じではないでしょうか。私たちはつい、「結果が出ている人」ばかりを見てしまいます。成功している人、活躍している人、収入が伸びている人。そして、自分と比べてしまう。「あの人は才能がある」「自分には能力がない」「もっと努力しなければ」——そう考えてしまいます。
しかし、その人にはその人の季節があります。今、花を咲かせている人も、見えないところで長い時間をかけて、根を張ってきたはずです。逆に、本当は自分が根を張る時期にいるのに、無理に花を咲かせようとして、苦しんでいる人もいます。
本来必要なのは、「もっと頑張ること」ではなく、「今、自分はどの季節にいるのか」を知ることなのかもしれません。
才能だけでは、説明できないもの
私は長年、人の才能や特性を研究してきました。ウェルスダイナミクスを通じて、多くの経営者や個人事業主と関わり、「人にはそれぞれ、生まれ持った自然な強みがある」ということを伝えてきました。けれど、それだけでは説明できないことが、いくつもありました。
同じような強みを持っているのに、伸びる人と伸びない人がいる。同じ力を持っているのに、ある年は絶好調で、ある年は何をやってもうまくいかない。逆に、一見すると何も変わっていないのに、ある時から突然、流れが変わる人もいる。この違いは、いったい何なのだろう。そう考え続けた結果、私は「才能」だけではなく、「流れ」が存在するのではないか、という考えにたどり着きました。
人にも、流れがある
自然界に四季があるように、人にも流れがあります。進むことが求められる時期。学ぶことが求められる時期。人と出会う時期。これまでを整理する時期。一度、手放す時期。そして、土の中で静かに力を蓄える時期。
それぞれに、意味があります。どれが良い、どれが悪い、ということではありません。冬があるから春が来るように、停滞しているように見える時間にも、ちゃんと意味があります。私たちは、その意味を知らないだけなのです。
川の流れに、逆らわない
川には、流れがあります。上流では勢いよく流れ、場所によっては穏やかになり、大きく蛇行するところもあります。もし流れに逆らって泳ぎ続ければ、必要以上に体力を使い、目的地に着く前に疲れ切ってしまうかもしれません。しかし、流れを理解し、流れを利用すれば、同じ力でも、ずっと遠くまで進むことができます。
人生も、同じではないでしょうか。私は、「頑張ること」が悪いと言いたいのではありません。むしろ努力は必要です。ただ、その努力をどこへ向けるのか、どのタイミングで力を使うのか。そこがとても重要なのです。追い風が吹いているときは、大きく前へ進めばいい。向かい風のときは、無理に全力疾走するより、体勢を整えるほうが、結果的に遠くまで行けることもあります。
自然を読む人は、リズムを知っている
自然を相手にする人たちは、そのことをよく知っています。漁師は潮を読み、登山家は天候を読み、農家は季節を読みます。自然を無視して成功する人は、いません。
渡り鳥も、そうです。彼らは、体力があるうちにがむしゃらに飛び立つのではありません。風向きが変わり、追い風が吹くその一日を待って、何千キロもの旅に出ます。同じ羽ばたきでも、風を味方につけるかどうかで、たどり着ける距離はまるで違う。彼らは、「今は、飛ぶ時ではない」という日を、じっと待つことができるのです。
大きな樹木も、そうです。地上に見えている幹と同じか、それ以上の根を、地中に静かに広げています。嵐の日に折れないのは、幹が太いからではなく、見えない根が深いから。伸びていないように見える時期こそ、実は根を張っている時期なのです。それなのに人は、こと自分の人生になると、その視点を忘れてしまいます。「今すぐ成果を出さなければ」「もっと頑張らなければ」「周りより早く成功しなければ」。そうやって自然のリズムから離れ、自分を責め続けてしまうのです。
不安の正体は、「未来」ではなく「現在地」
LifeFlowは、未来を予言するためのものではありません。まして、運命を決めつけるためのものでもありません。私たちが知りたいのは、「未来」ではなく「今」です。今、自分はどこにいるのか。今、何を優先すべきなのか。今は、進む時期なのか、それとも整える時期なのか。その現在地が分かれば、選択は大きく変わります。
人生の不安の多くは、実は「未来が分からないこと」から生まれているのではありません。本当は、「現在地が分からないこと」から生まれています。地図を持たずに知らない街を歩けば、不安になるのは当然です。でも、現在地さえ分かれば、目的地までの道筋は、自然と見えてきます。
知るべきは、未来ではない。今。
自然法則は、私たちを縛るものではありません。むしろ、本来の力を発揮するための土台です。風に逆らうことだけが、勇気ではありません。時には風を待つことも、勇気です。時には立ち止まることも、前進です。そして、自分の季節を知ることは、自分を諦めることではありません。むしろ、自分を信じ直すための、第一歩です。
自然界に法則があるように、人生にも流れがあります。その流れを知ることは、人生を楽にするためではありません。本来の自分の力を、最も自然な形で発揮するためなのです。
今という現在地を知ることが、本来の流れに乗るための、最初の一歩です。
- 努力が報われる時期と、報われにくい時期がある。その違いは「流れ」にある
- 自然界に四季があるように、人にも季節(進む・学ぶ・整える・蓄える時期)がある
- 止まって見える時期は、桜や樹木のように「根を張っている」時期でもある
- 不安の正体は「未来が分からない」ことより、「現在地が分からない」こと
- 知るべきは未来ではなく、今。現在地を知ることが、流れに乗る最初の一歩
