子育てが始まると、自分の時間や趣味、仕事のペースまでがすっかり変わってしまい、「私は何が好きだったんだろう」と戸惑う瞬間がある。そんなとき手がかりになるのが、生まれ持った力の源=コアという視点だ。

子育てで「自分がわからなくなる」のはなぜか

夜中の授乳や、子どもの機嫌に一日中付き合う日々の中で、以前は好きだった読書や友人とのおしゃべりが、いつの間にか遠いものになっていたと感じる人は少なくない。仕事をしていた頃は当たり前にできていた集中や決断が、今はうまく出てこないと戸惑うこともある。

けれどこれは、能力が落ちたわけではないことが多い。時間とエネルギーの使い道が、子どもを優先する形に切り替わっただけで、力そのものはどこかに残っている。

例えば、以前は仕事の企画会議で意見を出すのが得意だった人が、育休中は誰とも議論をする機会がなく、自分の考えを言葉にする力そのものが鈍ったように感じることがある。実際には力が消えたわけではなく、その力を使う場面が生活の中から一時的に減っているだけだ。

ただ、焦って「前の自分に戻ろう」と無理に元のペースを再現しようとすると、余計に苦しくなってしまう。子どもがいる生活の中で、以前と同じやり方を求めても噛み合わないことが多いからだ。

この「噛み合わなさ」は、生活のリズムだけでなく、力の出し方そのものが変わったことに気づかないまま無理を続けているサインでもある。以前のやり方をそのまま持ち込もうとするほど、疲労感だけが積み重なっていくことがある。

本当に見失っているのは「自分」そのものというより、「自分の力が出せる場面」が今の生活の中に見つかりにくくなっている、という状態なのかもしれない。

動力源=コアという視点で見直す

LifeFlowでは、生まれ持った力の源を「コア」と呼んでいる。生年月日から決まり、性格とは別に、生涯変わらないもので、愛・楽・個・智・徳・才の6種類に分けて考える。

例えば、徳のコアを持つ人は、誰かを支えたり見守ったりすることそのものが力の湧き出る場面になりやすい。子育てで疲れているように見えても、実は子どもとの関わり自体が本人にとってのエネルギー源になっている、ということもある。

反対に、才や個のコアの人は、自分のペースで物事を進めたり、専門的なことに深く関わったりする場面が減ると、力が出にくくなる傾向がある。子育てで自分の裁量が減ったと感じるとき、そこに原因があることもある。

ある人は、育休前は資料作りに没頭する時間が何より充実していたが、育児中はまとまった時間が取れず、常にどこか物足りなさを抱えていた。これは能力の問題ではなく、その人のコアが動きやすい場面が、生活の中で一時的に少なくなっていたためだと考えると納得がいく。

コアは性格を測るものではなく、もともと備わっている力の噴き出し口のようなものなので、「今の自分」を否定する必要はない。ただ、今の生活とコアの噴き出し口が、うまく重なっているかどうかを見てみる価値がある。

フィールドという発揮の方向

コアが「何に触れると力が湧くか」だとすれば、フィールドは「その力をどう発揮するか」という方向のことだ。革新・共鳴・継続・設計という4つの方向があり、これは経験の中で育っていく。

例えば、子どもの生活リズムを整えたり、決まった手順を積み重ねたりするのが得意な人は、継続のフィールドが強く働いていることが多い。一方で、子どもの興味に合わせて次々と新しい遊びやアイデアを考え出す人は、革新のフィールドが強く出ている場合がある。

子育ての中で、自分に向いていないやり方を無理に採用しようとすると、余計に疲れてしまう。例えば、決まったスケジュールに従うのが苦手な人が、育児書通りのタイムテーブルに厳密に従おうとして、かえって息苦しくなるようなケースだ。

反対に、毎日同じ流れで過ごすことが安心につながる人が、周囲に合わせて頻繁に予定を変えようとすると、落ち着かない気持ちが続いてしまうこともある。どちらが正しいというものではなく、自分が自然に力を発揮できる方向を知ることが大切だ。

この違いを知らないまま「他の家庭のやり方」を真似ようとすると、うまくいかない理由が見えず、自分を責めてしまいがちになる。フィールドという視点を持つだけで、そうした比較から少し距離を取れることがある。

力を出せる方向は、正しいやり方が一つに決まっているわけではない。自分に合った発揮の方向を知ることが、無理のない子育てにつながっていく。

フロー状態を子育ての中に探す

フローとは、時間を忘れて夢中になり、気づくと大きな力が出ている状態のことを指す。ここで鍵になるのは、外からの評価ではなく、自分の中から湧いてくる「やりたい」という気持ちだ。

子どもと一緒に絵を描いていて、ふと時計を見ると一時間経っていた、というような瞬間は、誰にでも一度はあるかもしれない。そうした瞬間は、単に子どもが楽しそうだったからだけではなく、自分自身の力の源が動いていたサインでもある。

別の例では、子どもの誕生日にケーキを一から手作りする準備に没頭し、気づけば深夜まで飾りつけを考えていた、という人もいる。傍から見れば大変そうに見えても、その人にとっては疲れよりも満たされた感覚が残っていることが多い。

こうした瞬間を「たまたま楽しかった一日」で終わらせず、繰り返し起きているかどうかを振り返ってみると、自分のコアが動きやすい場面のパターンが見えてくる。一度きりの出来事ではなく、共通点を探す視点が役立つ。

逆に、どうしても億劫に感じてしまう家事や役割があるなら、それを完璧にこなそうと無理をしなくてもいい。パートナーや周囲の人に任せる選択肢を持つことも、自分を保つための一つの工夫になる。

フローを感じた瞬間を思い出すことは、今の自分の力の源がどこにあるかを知るための、静かで確かな手がかりになる。

日常の場面で気づくヒント

仕事を一時的に休んでいる人が、子どもの通う園のPTA活動で急に力を発揮し、周りから頼られるようになる、という例はよくある。これは、育児そのものではなく、企画や調整といった別の場面でコアが噴き出しているサインかもしれない。

人と話すことが好きな人にとっては、ママ友との立ち話やちょっとした情報交換が、思いのほか力を取り戻す時間になっていることもある。逆に一人の時間が必要な人にとっては、そうした交流がむしろ負担になる場合もある。

例えば、休日に子どもを連れて図書館に行き、静かに絵本を選ぶ時間が何よりの息抜きになるという人もいれば、公園で他の親子と賑やかに過ごすことでエネルギーが満ちる人もいる。どちらが優れているわけではなく、それぞれの力の湧き方が違うだけだ。

こうした違いを「向き不向き」として片付けてしまうと、無理に自分を変えようとしてしまいがちになる。むしろ、どちらの過ごし方が自分に合っているかを知ることのほうが、日々の疲れを減らす近道になる。

子育てで消耗していると感じるとき、「自分がダメだから」と結論づける前に、「今の役割の中で、自分のコアが噴き出しにくい形になっているだけかもしれない」と考え直してみると、少し肩の力が抜けることがある。

自分を取り戻すための小さな一歩

生活を大きく変える必要はなく、一日の中にほんの少し、自分のコアが動く時間を作ることから始められる。例えば十五分だけ好きな作業をする、あるいは子どもと一緒に自分の好きなことを共有する時間を持つ、といった小さな工夫でも十分だ。

自分のコアを知ることは、育児と自分自身を対立させず、両立させるための手がかりになる。子どもを優先しながらも、自分の力の源を完全に手放さずにいる方法は、確かに存在している。

例えば、料理が好きな人なら、子どものお弁当作りを単なる作業ではなく、自分の創意工夫を発揮する時間として捉え直すだけで、同じ作業の感じ方が変わることがある。掃除や整理が得意な人なら、家の中を整えることそのものが力を取り戻す時間になっている場合もある。

大切なのは、育児の中の「やらなければならないこと」の中に、自分のコアが動く要素を少しでも見つけ、意識的に光を当ててみることだ。それだけで、同じ毎日の見え方が少しずつ変わっていく。

LifeFlowの診断は、そうした自分の動力源を見つけ直すための、ひとつの入口になる。生まれ持った力の源を知ることから、育児の中での自分の輪郭を、もう一度やさしく取り戻していくことができる。

この記事のまとめ
  • 子育てで自分を見失う感覚は、能力の低下ではなく力の使い道の変化によるもの
  • 生まれ持った力の源=コアを知ることで、消耗の理由が見えてくる
  • フィールド(発揮の方向)に合った子育てのやり方を選ぶと負担が減る
  • フロー状態を感じた瞬間を思い出すことが、自分を知る手がかりになる
  • 小さな時間から、育児と自分自身を両立させる工夫が始められる