昇進や役割の変化で急にリーダーを任されたとき、多くの人が「荷が重い」と感じます。それは決して弱さの証拠ではなく、自分に合ったリーダーシップの形がまだ見つかっていないだけかもしれません。この記事では、その重さの正体を少し違う角度から見つめ直してみます。
なぜ「重い」と感じるのか
課長に昇進したばかりの人が「みんなを引っ張らなければ」と気負い、夜も眠れなくなる。部活動でキャプテンを任された学生が、練習メニューを考えるだけで胃が痛くなる。
こうした話はめずらしくありません。周りからは「期待されているのだから頑張れ」と言われても、本人にとってはただ重荷が増えただけに感じられることがあります。
この重さは、能力が足りないというサインではないことが多いのです。むしろ「自分が思い描くリーダー像」と「自分が本来力を発揮しやすいやり方」がずれているときに、人はいちばん疲れます。理想のリーダー像を演じようとするほど、力の出どころから遠ざかってしまうのです。
たとえば人前で号令をかけるのが苦手な人が、無理にトップダウン型の振る舞いを続けると、会議のたびにエネルギーを消耗します。逆に、その人が得意な「一人ひとりに声をかけて状況を聞く」というやり方に切り替えるだけで、同じ役割でも驚くほど楽になることがあります。
新人研修の担当になった若手社員が、先輩から教わった通りに厳しく指導する型を真似て疲れ果てていた例もあります。実際には雑談を交えながら相手のペースに合わせて教えるほうが得意だったと気づき、やり方を変えたところ、指導が苦にならなくなったといいます。
こうしたズレが生まれる背景には、リーダーという役割に対して自分自身が抱いている期待と、周囲から寄せられる期待の両方が影響しています。
どちらも「こうあるべき」という思い込みでしかない場合が多く、まずはその思い込みを疑ってみることが、重さをほどく最初の一歩になります。
「リーダーらしさ」への思い込みが重さを生む
私たちは知らないうちに、リーダーとは「決断力があり、常に前に立ち、声が大きい人」だという一つの像を持ってしまいがちです。テレビドラマや偉人の伝記に出てくるリーダーの多くが、そうした強さの象徴として描かれてきたからです。
しかし実際の職場を見渡すと、会議で意見をまとめて仕切るのが得意な人もいれば、裏で一人ひとりの意見を聞いて調整するのが得意な人もいます。前に出るタイプだけがリーダーではなく、後ろから支えるタイプのリーダーも、チームには欠かせません。
ある部署では、口数の少ないマネージャーが黙々とデータを整理し、方向性を静かに示すことでチームをまとめていました。
声高に指示を出すタイプではありませんでしたが、メンバーからの信頼は厚く、結果もついてきていました。リーダー像は一つではないという事実に、まず気づくことが大切です。
家庭でも同じことが起きます。子どもの習い事の保護者会で世話役を任された人が、周りを仕切るのが苦手で悩んでいたところ、実は連絡係として細やかに動くほうが得意だと気づき、その役割に徹したことで自然と頼られる存在になった、という話もあります。
こうした思い込みは、幼いころから見聞きしてきたリーダー像の積み重ねによってつくられていきます。だからこそ、いったん立ち止まって「自分にとって心地よいリーダーの形は何か」を考え直すことが、重さから抜け出す手がかりになるのです。
動力源によって力が湧くリーダーシップは違う
LifeFlowでは、生まれ持った力の源を「コア」と呼び、愛・楽・個・智・徳・才の6つに分けて考えます。コアは性格診断とは違い、生年月日から決まり、生涯変わらないその人の「動力源」です。どこに触れると力が湧くかが、コアによって異なります。
たとえば徳のコアを持つ人は、人と人をつなぎ、場の空気を整えることに力が湧きやすい傾向があります。PTAの役員を任された母親が、自分から意見を主張するより、みんなの声を丁寧に拾って合意形成をしていくやり方に切り替えたところ、負担感がぐっと減ったという話もあります。
一方で智のコアを持つ人は、情報を整理して筋道を示すことに力が湧きます。才のコアの人は、結果にコミットして実行を主導することに手応えを感じやすいでしょう。同じ「リーダー」という役割でも、力の湧き方はコアごとに違うのです。
楽のコアを持つ人がリーダーを任された場合、堅苦しい会議進行よりも、雑談やユーモアを交えながら場を和ませるやり方のほうが自然に力を発揮できることがあります。
実際に、飲み会の幹事を明るくこなすうちに周囲から自然とまとめ役を頼られるようになった、という例も少なくありません。
同じ役職を任されても、コアが違えば消耗の度合いはまったく変わってきます。自分のコアに沿った振る舞いをしているときは、多少忙しくても心の底ではどこか楽しさを感じられるものです。逆にコアと合わない振る舞いを続けていると、成果が出ていても疲労感だけが積み重なっていきます。
重いのは役割のせいではなく、動力源に合わない振る舞いを続けているせいかもしれません。
フィールドは発揮の方向を教えてくれる
コアが「動力源」だとすれば、その力をどう発揮するかの方向を示すのが「フィールド」です。LifeFlowでは革新・共鳴・継続・設計という4つの方向で考えます。
これは経験の中で育っていくもので、同じコアを持つ人同士でも、フィールドが違えばリーダーとしての振る舞いは変わってきます。
新規事業を立ち上げるリーダーには、前例のないやり方を切り開く革新のフィールドが活きやすい場面が多くあります。一方、長年続く既存チームをまとめるリーダーには、積み重ねを大切にする継続のフィールドが力を発揮しやすいでしょう。
同じ智のコアを持つ二人がいても、一人は新しい仕組みを設計することに燃え、もう一人は既存の仕組みを丁寧に運用し続けることに手応えを感じるかもしれません。「自分はどちらのリーダーシップが向いているのか」を考えることは、重さを軽くする手がかりになります。
共鳴のフィールドを育ててきた人がリーダーになると、メンバー同士の関係性を丁寧につなぐことでチームのまとまりをつくっていく傾向があります。
あるチームリーダーは、目標達成の号令をかけるより、メンバー同士の対話の場を増やすことに力を注いだところ、自然とチームの結束が強まったといいます。
フィールドはコアと違って、経験を重ねる中で少しずつ育っていくものです。今の自分がどの方向に心地よさを感じるかを観察し続けることで、リーダーとしての振る舞い方も少しずつ自分に馴染むものへと変わっていきます。
フローに入れないリーダーシップは続かない
時間を忘れて夢中になり、もっとも力が出る状態を、LifeFlowでは「フロー」と呼びます。フローに入る鍵は、内発的動機、つまり「やりたいからやっている」という感覚です。誰かに言われて仕方なく引き受けたリーダー職では、この感覚がなかなか生まれません。
逆に、自分から手を挙げて始めたプロジェクトのリーダーは、たとえ忙しくても不思議と疲れにくいという経験をした人は多いはずです。
子どもの習い事のグループをまとめる役を、頼まれて渋々引き受けた場合と、自分が良くしたいと思って引き受けた場合とでは、同じ作業量でも感じる重さがまったく違います。
フローに入れないままリーダーを続けると、成果は出せても消耗は積み重なっていきます。逆に、自分の力が自然に湧く場面を少しずつ増やしていくと、役割そのものへの見方が変わっていくことがあります。
趣味で始めた読書サークルの運営を任された人が、業務で感じるような重さをまったく感じなかったという例もあります。誰かに評価されるためではなく、自分自身が良くしたいという気持ちから動いていたため、時間を忘れて準備に没頭できていたのです。
内発的動機は、外から与えられる目標達成のモチベーションとは質が異なります。数字や評価のためだけに動いているときはどこか消耗が募りますが、自分の内側から湧いてくる感覚に従って動けているときは、忙しさの感じ方そのものが変わってくるのです。
自分に合った任され方を選び直す
リーダーを任されて重いと感じたときは、まず「自分はどんなときに力が湧くのか」を思い出してみることをおすすめします。人をまとめることか、方向性を示すことか、結果を出すことか、場を和ませることか。その感覚こそが、自分の動力源を知る手がかりになります。
役職や肩書きに縛られず、自分のコアに合った振る舞い方を選び直すだけで、同じリーダーという役割が驚くほど軽くなることがあります。会議の進め方一つ、チームへの声のかけ方一つを変えるだけでも、負担感は変わってきます。
重さの正体は、能力不足でも性格の欠陥でもなく、多くの場合は自分の動力源とのズレです。その一歩として、自分のコアを知ることから始めてみると、リーダーという役割との付き合い方が、少しずつ楽になっていくはずです。
ある管理職は、上司との面談で「自分は前に立って引っ張るより、裏方で支える方が向いている気がする」と率直に相談したところ、役割分担を見直してもらえたといいます。小さな相談や実験を重ねることで、無理に理想のリーダー像を演じ続けなくても済む道が見つかることがあります。
最初から完璧な形を目指す必要はありません。今の役割の中で少しだけやり方を変えてみる、小さな範囲で自分らしい振る舞いを試してみる。そうした小さな一歩の積み重ねが、やがてリーダーという役割全体を、自分にとって無理のないものへと変えていってくれます。
この記事のまとめ
- リーダーを任されて感じる重さは、能力不足ではなく自分に合わないやり方を続けているサインであることが多い
- リーダー像は一つではなく、前に出るタイプも支えるタイプも同じように大切な役割
- コア(動力源)によって、力が湧くリーダーシップの形は異なる
- フィールド(革新・共鳴・継続・設計)は、その力をどう発揮するかの方向を教えてくれる
- 内発的動機から生まれるフローの感覚を大切にすることで、リーダーという役割との付き合い方が変わっていく