成功した経営者には、決まった型があるように見えることがあります。でも生年月日で6コアに分けてみると、実はどのコアにも成功者はいました。違ったのは、事業の「色」のほうでした。
成功者は特別なコアに偏っているのか
経営者の伝記やインタビューを読んでいると、成功にはある種の共通パターンがあるように感じることがあります。強い意志、圧倒的な行動力、周りを巻き込む力。
そう考えると「成功する人は、特定のコアに偏っているのでは」という仮説が浮かびます。たとえば新しいものを生み出す力が強い人ばかりが成功しているのではないか、というふうに。
実際に、有名な経営者を生年月日で6コアに分けて眺めてみました。すると、才・智・個・楽・徳・愛のどのコアにも、名の知られた経営者がいました。
特定のコアが有利、ということはありませんでした。これは会社員でも同じで、営業成績のいい人が全員同じコアというわけではないのと似ています。
面白かったのは、コアが違うと事業の色そのものが違って見えてきたことです。何を大事にして、どう戦っているかに、はっきりした傾向がありました。
ここからは、コアごとにどんな事業の色が出ているのかを、実名を挙げながら見ていきます。あくまで一つの見方として読んでもらえたらと思います。
才と智——新しい価値を生む人、本質を極める人
才は「新しい価値を生み出したい」という動力源です。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、孫正義、ウォルト・ディズニー。世界の仕組みそのものを変えるような事業を仕掛けた人たちが並びます。
共通しているのは、既存の市場に乗るのではなく、市場ごと作り直そうとする発想です。スマートフォンも、OSも、通販の仕組みも、なかった頃には「そんなものが必要か」と言われていました。
一方の智は「本質を知りたい」という動力源です。柳井正、松下幸之助、本田宗一郎、豊田章男。こちらは新しい市場を作るというより、既にあるものを突き詰めて仕組みを磨き上げるタイプです。
ユニクロの服づくりも、トヨタの生産方式も、派手な発明というより、地道な改良の積み重ねで別次元の完成度にたどり着いています。同じ「モノづくり」でも、才と智では入口が違います。
職場でも似た違いを見かけます。新機能をどんどん試したい人と、既存の仕組みの精度を上げたい人が同じチームにいると、最初はぶつかっているように見えることがあります。
でも実はどちらも必要で、噛み合えば強い組み合わせになります。片方だけでは、革新はあっても粗くなり、精度はあっても止まってしまうことがあるからです。
個と楽——一匹狼の革新者、体験をつくる人
個は「自分らしくありたい」という動力源です。イーロン・マスク、フィル・ナイト、堀江貴文、星野佳路。常識のレールに乗らず、自分の基準で突き進むタイプが目立ちます。
電気自動車もロケットも、スニーカーブランドも、最初は「そんなの無理だ」と言われた領域です。周囲の評価より、自分の中の納得を優先する強さが、事業を動かしています。
楽は「楽しいことをしていたい」という動力源です。Airbnbのブライアン・チェスキー、H.I.S.の澤田秀雄、サイゼリヤの正垣泰彦、森岡毅。こちらは体験やサービス、エンタメの色が濃く出ます。
旅も、外食も、テーマパークも、人の楽しい時間そのものを商品にする発想です。個が「自分の道を貫く」のに対し、楽は「その場を面白くする」ことに軸があります。
身近な例で言えば、決まった手順より自分のやり方で結果を出したい部下と、雰囲気やノリを大事にして周りを巻き込む部下が、同じ職場にいることがあります。どちらも悪くはなく、力の出どころが違うだけです。
上司がその違いを知らずに同じマネジメントをすると、片方は窮屈になり、もう片方は物足りなくなることがあります。ここでも噛み合いが大事になってきます。
徳と愛——信頼を積む人、人の役に立つ人
徳は「認められ、積み上げたい」という動力源です。ウォーレン・バフェット、パタゴニアのイヴォン・シュイナード、吉野家を立て直した安部修仁、ダイソーの矢野博丈。じっくり信頼を築くタイプです。
投資も、アウトドアブランドも、外食チェーンの再建も、派手さより長い時間をかけた積み重ねが土台になっています。急がず、崩さず、という戦い方が向いています。
愛は「人の役に立ちたい」という動力源です。井深大、鈴木敏文、一風堂の河原成美、ほぼ日の糸井重里。人を支える商売や、人と人の距離を縮める仕事に色が出ます。
コンビニの仕組みも、ラーメン一杯も、ウェブメディアの言葉も、根っこには「誰かの日常を良くしたい」という動機が見えます。事業の形は違っても、向いている先が似ています。
家庭で言えば、家計を長期でこつこつ積み立てたい親と、家族との時間を今すぐ楽しくしたい親がいて、どちらが正しいという話ではないのと同じです。
子育ての方針でも、じっくり積み上げる子と、人との関わりから力が出る子がいます。動力源が違えば、伸びる場も違ってきます。
同じ「成功」という言葉の中に、まったく違う戦い方が同居している。それが、6コアで経営者を眺めてみて一番残った感触でした。
同じ成功でも、戦い方が違う理由
ここまで見てきたように、成功した経営者は決して一色ではありませんでした。世界を変えた人もいれば、仕組みを極めた人、自分の道を貫いた人、体験を作った人、信頼を積んだ人、人を支えた人がいます。
大事なのは、その戦い方が本人のコアと噛み合っていた、ということです。才の人が徳のようにじっくり積み上げるやり方をしていたら、途中で息切れしていたかもしれません。
逆に、徳の人が才のように市場ごと作り替えることを狙っていたら、地に足のつかない事業になっていた可能性もあります。型は真似られても、動力源までは真似できないからです。
これは経営者に限った話ではありません。30代で転職を考えている会社員が、憧れの先輩と同じキャリアの積み方をしようとして、なぜか気持ちが乗らないということがあります。
先輩のやり方は先輩のコアに合っていただけで、自分には別の噛み合い方があるのかもしれません。真似ることと、自分に合わせることは、似ているようで違います。
だからこそ、憧れの誰かのやり方をそのままなぞるより、自分の力がどこで素直に出るかを知っておくほうが、遠回りにならずに済みます。
型をなぞるより、自分のコアに合う戦い方を
ここまで紹介した経営者たちは、誰もが「成功のお手本」として語られる人たちです。でも6コアで見ると、そのお手本は一つではなく、少なくとも6種類ありました。
だとしたら、自分が参考にすべきお手本も、一つに絞らなくていいはずです。むしろ、自分のコアと近い戦い方を選んだ方が、無理なく力が出せます。
たとえば新規事業のアイデアを次々出したい人が、じっくり型を守る文化の会社にいると、力があるのに評価されにくいことがあります。逆に、コツコツ型が向いている人が、常に新しさを求められる環境にいると、消耗してしまうこともあります。
これはどちらが優れているという話ではなく、置かれている場所と動力源が合っているかどうかの話です。合う場所にいれば、同じ努力量でも結果が出やすくなります。
有名経営者の物語は、憧れとして眺める分には気持ちが上がるものです。ただ、そのまま自分の人生に当てはめようとすると、どこかでずれが出ることがあります。
ずれに気づいたときこそ、自分の動力源、つまりコアを確かめてみるタイミングかもしれません。生まれ持った力の出どころを知ることは、憧れの型を追いかけるよりも、自分に合った戦い方を見つける近道になります。
この記事のまとめ
- 有名経営者を6コアで分けると、特定のコアに偏ってはおらず、才・智・個・楽・徳・愛のすべてに成功者がいた。
- 才は世界を変える発明・革命型、智はモノづくりや仕組みを突き詰める型で、事業の入口が違う。
- 個は常識に染まらない一匹狼の革新者型、楽は体験やサービス・エンタメを作る型で、力の出し方が異なる。
- 徳は信頼をじっくり積み上げる型、愛は人を支える商売に向かう型で、時間の使い方が違う。
- 憧れの経営者の型をそのまま真似るより、自分のコアに合った戦い方を見つける方が、無理なく力が出せる。